
「査定価格」と
「売れる価格」は
違う?不動産価格
の考え方
「この家なら、いくらで売れますか?」
不動産の売却を考えた時、まず気になるのは価格ではないでしょうか。
不動産会社に査定を依頼すると、「査定価格」が提示されます。
しかし、査定額が1,800万円だったからといって、実際に1,800万円で売れるとは限りません。
さらに、1,800万円で売却できたとしても、その金額がそのまま売主の手元に残るわけでもありません。
不動産の売却では、査定価格、売り出し価格、成約価格、そして最終的な手取り額を分けて考えることが大切です。
◆不動産には「定価」がない
中古住宅や土地には、新品の商品と違って決まった定価がありません。
同じ地域、同じくらいの広さ、同じ築年数の住宅でも、駅からの距離や前面道路、土地の形、日当たり、間取り、建物の状態などによって条件は変わります。
さらに、不動産会社が査定するときに見るのは、その物件だけではありません。
現在、周辺でどのような物件がいくらで売りに出されているのか。過去には似た物件がいくらで成約しているのか。
今の市場で比較されたとき、その物件がどの位置にいるのか。
こうした情報を組み合わせて、価格を考えていきます。
過去に近くの物件が1,500万円で売れたとしても、現在も同じ価格で売れるとは限りません。
似た条件の物件が1,300万円で複数販売されていれば、1,500万円では比較されたときに不利になることもあります。
不動産価格は、過去の取引だけでなく、「今、市場でどう見られるか」でも変わるのです。
◆査定価格は「物件そのものの値段」ではない
不動産会社が査定する時は、周辺の成約事例や現在の販売物件を確認し、土地・建物の面積、築年数、間取り、道路付け、建物の状態などを比較します。
たとえば同じエリアに1,500万円前後の中古住宅があったとしても、
「こちらは土地が広い」
「こちらは築年数が新しい」
「こちらは駅から遠い」
「こちらは購入後にリフォーム費用がかかりそう」
など、それぞれ違いがあります。
その違いを踏まえて、「この物件なら現在の市場でどの価格帯が妥当か」を考えます。
つまり査定価格は、単に土地と建物を評価した数字ではなく、その物件が市場の中でどのように評価されるかを考えた価格でもあります。
◆なぜ不動産会社によって査定額が違うのか
複数の不動産会社に査定を依頼すると、会社によって金額が違うことがあります。
査定には過去の成約事例などの客観的な材料だけでなく、「この物件なら、この価格帯の購入者に届きそうだ」という判断も入るためです。
ただし、査定額が高ければ高いほど良いとは限りません。
たとえば、1,500万円なら購入を検討する人がいる物件を、1,800万円で売り出したとします。
「最初は高く出して、反応を見ながら下げればいい」と考えることもできますが、最初の価格を見て「予算に合わない」と判断されれば、比較対象から外されることがあります。
その後に価格を下げても、最初に見送った人が再び検討してくれるとは限りません。
そのため不動産会社は、いくらで売り出せるかだけでなく、その価格で買主が動く可能性があるかまで考えます。
◆「希望価格」「査定価格」「成約価格」はそれぞれ違う
売却時には、三つの価格を分けて考えると分かりやすくなります。
まず「希望価格」
これは売主が「できればこの金額で売りたい」と考える価格です。
次が「査定価格」
不動産会社が市場や物件の条件をもとに、「このあたりが妥当ではないか」と判断する価格です。
そして「成約価格」
実際に購入する人が現れ、交渉などを経て、売主と買主が合意した価格です。
この三つが一致することもありますが、違うこともあります。
たとえば、売主は1,800万円で売りたい。
しかし査定では1,600万円程度。
そして実際には1,650万円で購入したいという人が現れ、条件がまとまる。
この場合、1,800万円という希望価格が間違いだったわけでも、1,600万円という査定が絶対的な正解だったわけでもありません。
実際の市場で買主との間に成立した1,650万円が、その取引における成約価格です。
◆売り出してから分かることもある
査定の段階では、実際に市場へ出したときにどの程度の反響があるのかまでは分かりません。
そこで販売を開始した後、問い合わせの数、内覧につながるかどうか、内覧後の反応、価格についての声などを見ていきます。
問い合わせは多いのに内覧につながらないのであれば、写真や物件情報の見せ方に問題があるかもしれません。
内覧はあるのに申し込みにつながらないのであれば、価格と物件の状態が合っていない可能性もあります。
一方で、問い合わせや内覧が順調に入り、購入希望者から具体的な話が出てくるのであれば、価格設定が市場に合っている可能性があります。
つまり、売り出した価格に対して市場がどう反応したかも、価格を考えるための重要な材料になります。
◆ 売れた金額が、そのまま手元に残るわけではない
もう一つ忘れてはいけないのが、成約価格と手取り額は違うということです。
不動産を売却すると、仲介を依頼した場合には仲介手数料がかかります。
仲介手数料は売却価格に応じて上限額が変わります。
また、固定資産税・都市計画税については、引渡し日を基準に売主と買主の間で日割り精算します。
住宅ローンが残っている場合には、抵当権抹消などの登記関係費用が発生するほか、売却に伴って測量や境界確認、残置物の処分などが必要になるケースもあります。
さらに、売却によって利益が出れば、譲渡所得に対する税金がかかる場合もあります。
ただし、税金については所有期間や居住用財産に関する特例などによって扱いが変わるため、個別に確認が必要です。
つまり、
成約価格-売却にかかる費用-住宅ローンなどの残債=手元に残る金額
というイメージで考える必要があります。
たとえば、売却価格が100万円高くなったとしても、その100万円がそのまま手取りの増加になるわけではありません。
売却を考えるときには、「いくらで売れそうか」だけでなく、売却後にいくら残るのかまで見ておくことが重要です。
◆「高く売る」と「高く売り出す」は違う
ここは価格を決めるうえで、特に意識したいところです。
1,800万円で売り出すことと、1,800万円で売れることは別です。
さらに、1,800万円で売れたとしても、そこから仲介手数料などの費用や住宅ローンの残債などを差し引けば、実際の手取りは1,800万円を下回ります。
だからといって、最初から安く売ればいいという話でもありません。
大切なのは、物件の条件と市場を見ながら、買主から見ても検討しやすく、売主にとっても納得できる価格を探すことです。
住み替えを予定しているなら、次の住まいにどの程度のお金を回したいのか。
住宅ローンを完済したいなら、いくら以上で売る必要があるのか。
こうした事情によっても、売却価格に対する考え方は変わります。
◆査定で確認したいのは「金額の根拠」
査定を依頼した時、提示された金額だけを比較するのではなく、その金額になった理由を聞いてみることが大切です。
・どの成約事例を参考にしたのか。
・現在売り出されている類似物件と比べて、価格や条件にどのような違いがあるのか。
・この物件を購入する可能性があるのは、どのような人なのか。
・売却にかかる費用や住宅ローンの残債などを踏まえると、最終的に手元に残る金額はどの程度になるのか。
ここまで確認すれば、単に「高い査定額を出してくれた会社」ではなく、物件の価格から売却後の資金まで考えてくれる会社なのかを判断する材料になります。
◆不動産価格は「一つの数字」ではない
不動産売却では、売主の希望価格、査定価格、売り出し価格、成約価格、そして手取り額があります。
どの数字を基準にするかによって、売却に対する見え方も変わります。
「できるだけ高く売りたい」という気持ちは当然です。
ただ、本当に考えたいのは、高い価格をつけることではなく、自分にとって納得できる条件で売却を終えることです。
査定価格を一つの答えとして受け取るのではなく、
「なぜこの価格なのか」
「この価格で市場に出したらどう見られるのか」
「実際に売れたら、いくら手元に残るのか」
まで確認する。
不動産価格を見る時は、目の前の「○○万円」という数字だけでなく、その先まで含めて考えることが大切です。
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